大判例

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福岡高等裁判所 昭和32年(う)1148号・昭32年(う)1150号・昭32年(う)1149号 判決

所論は要するに、原判示第一の被告人等三名共謀による本件火薬類所持と、原判示第二の被告人大坂治郎の本件火薬類所持とは、包括一罪を形成するものであるのに拘らず原判決が右被告人大坂治郎に対し併合罪の成立を認めたのは、所持罪に関する法令の適用を誤つたものであるというのである。

しかしながら火薬類は公共の安全に影響するところ甚大であるからその取扱については万全の注意を要すること勿論であつて、これがため火薬類取締法はその製造、販売、貯蔵、運搬、消費などの取扱に関しそれぞれ所轄官庁の許可を受けしめてこれを規制し、災害発生の防止に遺漏のないことを期しているのである。従つて倉庫等の中に保管所蔵していたもののうちから爆破等の目的のため小量のものを取り出し所持携帯している場合、右携帯している火薬類に関し別個の所持罪を構成するものと解するのが相当である。

これを本件について考えてみるのに、被告人大坂治郎は原判示第一厚吉丸の所有者で且つ船長として沿岸漁業に従事しているものであるが、昭和三一年六月中旬頃元軍隊の使用していた大砲の弾丸を発見拾得してその後その内容である黄色火薬を自宅物置内に隠匿保管し、ついで同年九月上旬頃朝鮮人の氏名不詳の者から雷管及び導火線を入手して前同様自宅物置内に保管所持し、二、三日後握りこぶし大の俗に「ゲンコツ」と称するもの五個を作成して密漁目的に使用したことがあるほか、昭和三二年二月二〇日午後被告人毛越繁之助方に赴きダイナマイト密漁のことを協議した後被告人大坂は自宅に於て前記火薬類を使用して「ゲンコツ」三個を作成し、同日夕刻同被告人の妻の弟にあたる被告人梅野孫次郎が来訪したので明日右ダイナマイト密漁に赴くことを打明け同被告人もこれに参加することとなつたので、原判示第一掲記のとおり被告人等三名厚吉丸に乗組み被告人大坂治郎が同判示火薬類を所持して密漁せんとしているところを海上保安庁係官に発見逮捕され、同被告人の自供によつて家宅捜索を受けた結果、原判示第二掲記の火薬類が差押え竝びに領置されるに至つたことが認められる。従つて右原判示第一の被告人等三名による厚吉丸船内における火薬類の所持と、同第二の被告人大坂治郎の自宅物置内における原判示火薬類の所持とは所持の態様目的において、火薬類取締法の趣旨とする公共の安全確保災害防止の見地からみて相当の隔たりがあり、原判決が原判示第一の所持について別個独立の犯罪を構成するものとしたのはまことに正当であつて、所論は採用の限りでない。論旨引用の当裁判所の判例(猥褻文書所持に関する昭和二七年二月一五日判決高等裁判所判例集第五巻第二号二四九頁以下参照)は本件に適切でないのみならず、昭和二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決(集第三巻第六号七九六頁以下参照)の不法所持罪の罪数に関する見解も亦右に述べたところと同旨であるというべきである。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 厚地政信 裁判官 中島武雄)

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